2015年、東京ビッグサイトで開催された Inter Pet において、私はタイのブランド「Devon & Drew」と初めて出会いました。 タイパビリオンの中にあったそのブースは、周囲とは少し異なる空気を持っていました。 デザイン、世界観、商品の完成度。 単に「ペット用品」というより、一つのライフスタイルブランドとして成立していたのです。 特に印象的だったのは、“価格競争の商品”ではなく、“ブランドとしての存在感”を感じたことでした。 当時私は、日本側企業のシニアフェローとして展示会を視察していましたが、その場で強く「このブランドを扱うべきだ」と提案しました。 しかし会社側は、従来の中国製低価格商品の延長線上で考えており、ブランド構築よりも価格競争を重視していました。 結果として、私はその会社を離れ、自ら会社を立ち上げ、直接バンコクへ向かい、Devon & Drew チームと交渉を始めました。 ________________________________________ MOQではなく、ブランドを議論する 当時、日本の上場企業も Devon & Drew に接触していました。 彼らは主に MOQ(最小発注数量)や数量ディスカウントを中心に交渉していました。 一方、私たちが議論していたのは、 「このブランドは何なのか」 「どの価格帯で市場に立つべきか」 「どういう顧客に支持されるべきか」 という、“ブランドそのもの”についてでした。 私は実際に Devon & Drew の商品を日本へ持ち帰り、Journal Standard や SHIPS などの市場商品と比較調査を行いました。その結果、品質・デザインともに、決して劣っていないどころか、むしろ優れていると感じました。 しかし価格は、日本市場の商品より大幅に安かったのです。 私は Devon & Drew チームに対し、「価格を2倍に引き上げるべきだ」と提案しました。 当然、単なる値上げではありません。 ブランドポジション、販売先、世界観、見せ方を含めて、価格を再設計する必要があると考えたのです。 結果として、彼らはこの提案を受け入れ、日本市場向け価格戦略を見直しました。 ________________________________________ 価格はコストだけでは決まらない 価格は、単純な原価計算だけで決まるものではありません。 最終的に価格を決めるのは、市場であり、お客様です。 例えば、高級日本酒は、必ずしも原価が2倍だから価格が2倍になるわけではありません。 そこには、 ・品質への信頼 ・ブランドの背景 ・デザイン ・ストーリー ・世界観 ・所有する満足感 など、多くの「付加価値」が存在しています。 重要なのは、“お客様が、その価格に価値を感じるかどうか”です。 もちろん、その前提として品質は極めて重要です。 品質が伴わないブランド戦略は長続きしません。 だからこそ Devon & Drew では、品質とデザインには非常に強いこだわりを持ち続けました。 ________________________________________ Additional Value(付加価値)がブランドを作る ブランドにおける付加価値とは、単なる機能追加ではありません。 「なぜ欲しくなるのか」を作ることです。 それは時に、デザイナーの背景であり、ブランドヒストリーであり、家族の物語であり、 世界
観そのものかもしれません。 Devon Andrew の持つ英国的な感性や家族背景、 ビジュアルイメージ、ブランドが醸し出す空気感。 それらすべてが、商品の魅力を形成していました。 ブランド戦略とは、単に商品を売ることではなく、「どういう価値として市場に存在するか」を設計することなのだと思います。